シール材が長期に使用されたときの劣化要因と現象、結果の体系的な見方を図-1に示します。いくつかの要因がシール材の分子構造、化学構造などに変化を与え、外観、物理特性、力学特性などに変化を生じますが、これらの、変化を定量的、定性的に捉えることが耐久性評価といえます。
シールドトンネルなどの地下環境下で使用される水膨張シール材は、光から遮断され、空気の流通もなく、また、温度変化も極めて小さくシール材にとっては劣化要因の少ない比較的安定した環境条件にあるといえます。前述の劣化要因から、水膨張シール材の耐久性評価項目は図-2のようにまとめることができます。
水膨張シール材の水中浸漬時における長期的な接面応力の推移
接面応力ですが、試験結果①は初期は0.60N/mm2に対し、浸漬後は1.02N/mm2に増加しています。試験結果②は、初期0.95N/mm2に対し、浸漬後は1.52N/mm2に増加して推移しています。①について、接面応力が設定水圧0.44N/mm2に至る年数を求め、耐久性の推定を行った結果を以下に示します。
反応速度論より、化学反応の速度と温度の関係について次式が成り立ちます。
K=Aexp(-Ea/RT)
これより、寿命推定式は次式のように導かれます。
In t=Ea/RT+const
すなわち、寿命tの対数と劣化温度Tの逆数の間に直線関係が成立します。従って高温での促進試験のプロットの外挿により常温時の寿命が予測できます。物性値の半減値を寿命の標準基準としたときのシール材の寿命推定結果を以下に示します。
この結果から、シール材の物性低下は、比較的起こりにくいといえます。
①耐薬品性
シール材が使用条件下でさらされる水、海水、セメント水等の塩、アルカリに対する
抵抗性を以下に示します。
塩、アルカリに対してはほとんど影響されず安定しています。
②質量変化率
水膨張シール材は水膨張物質の溶出が問題になることから、水膨張物質の溶出量(質量変化率)を耐久性の目安とするケースがあります。ポリシーラー1000W-TOにおける試験結果は、以下のようになり、東京湾横断道路株式会社殿における基準(-5%以下)を満足しています。
<結論>
以上の結果から、水膨張シール材は力学特性、物理特性、化学特性に優れ実用上、十分な耐久性を有しているといえます。